債務整理の流れ

司法書士は債務整理の依頼を受けると、貸金業者等に対して受任通知を送付します。受任通知送付後は債務者に対する取立て行為が禁止されています。また、債務整理の方針を決定するまでは一時的に貸金業者等への返済をストップします。受任通知の送付と合わせて取引履歴の開示請求を行います。取引履歴が開示されると利息制限法に基づいて引直計算をして残債務額を確定させます。この残債務額を3~5年間、36~60回で分割返済していけるかが債務整理の手続き選択の目安になります。

  • 相談受付
  • 受任通知送付・取引履歴開示請求
  • 利息引直計算
  • 残債務額の確定
  • 各手続きへ
    • ⅰ任意整理
    • ⅱ特定調停
    • ⅲ個人再生
    • ⅳ自己破産
    • ⅴ過払金返還請求

債務整理の手続き

債務整理には、ⅰ任意整理ⅱ特定調停ⅲ個人再生ⅳ自己破産ⅴ過払金返還請求といった手続があります。分割弁済により支払を続け、債務を完済できる見込みがあるのであれば任意整理又は特定調停、支払不能となるおそれのある場合には個人再生、支払不能であれば自己破産を選択します。

最初の面談時に用意していただくもの

  • 債権者全員の氏名、住所、残債務、取引の始期を記載したメモ等
    どこから借入があるか(完済したところを含む)をメモにまとめてください。
  • 契約書、カード、領収書、ATMの受取書、督促状等
  • 認印

過払金とは

借入利率が利息制限法の上限利率を超えている場合、利息制限法に基づく引直計算により、過去に返済した無効な利息部分を元本に充当していくと、過去のある時点で債務を完済していることが判明する場合があります。それ以降に返済した分は過払金として返還するよう債権者に請求することが可能です。取引期間が7年ぐらいになると、過払金が発生している可能性があります。

ブラックリストとは

ブラックリストに載るとは信用情報機関に事故情報として登録されることです。公的なものでもありませんので戸籍や住民票に載ることはありません。債務整理手続きを開始すると、一時的に返済をストップしますので延滞情報としてブラックリストに載ると思われます。ブラックリストに載ると5年から10年の間、金融機関からお金を借りたり、クレジットカードを使用したりすることができなくなります。

貸金業者からの取立てに対して

司法書士が受任通知を送付した後は、貸金業者からの債務者に対する取立て行為は禁止されています。貸金業者から取立ての電話があった場合は「司法書士に債務整理を依頼しましたので、そちらに問い合わせてください」と伝えてください。

支払不能とは

支払不能かどうかは、貸金業者の主張する残債務額ではなく、利息制限法に基づく引直計算により確定した残債務額を基に判断します。確定した残債務額を3~5年間、36~60回で分割返済していけるかを目安に、毎月の返済可能額や保有している資産、親族援助の可能性などを考慮し総合的に判断します。毎月の返済可能額を算出するには、給与や年金などの収入と生活費などの支出がどうなっているかの家計収支を把握することが不可欠です。

利息制限法に基づく引直計算とは

利息制限法の上限利率を超える利息は、民事上無効な利息です。無効な利息を支払っていた場合は取引当初にさかのぼり、利息制限法に基づいて計算し直すことになります。それを引直計算と呼んでいます。引直計算では無効な利息として返済していた分を元本に充当します。その結果、残債務額が大幅に減少したり、場合によっては過払金が発生したりします。

利息制限法の上限利率

元本の額 利息 遅延損害金
10万円未満の場合 年20% 年29.2%
10万円以上100万円未満の場合  年18% 年26.28%
100万円以上の場合 年15% 年21.9%

ⅰ任意整理

裁判外で貸金業者等と交渉し、分割返済の和解をする手続です。和解に至るまでの交渉は司法書士が行います。和解するまでは一時的に貸金業者等への返済をストップします。借入利率が利息制限法の上限利率を超えている場合は、借入残額の圧縮が望めます。また、返済期間の延長や、将来利息を付さない交渉を行い、家計収支の範囲内で完済できる返済計画を立てます。

ⅱ特定調停

裁判所において調停委員会が間に入り、貸金業者等と分割返済の交渉を行います。調停委員会が取引履歴開示請求や利息引直計算をしてくれるので、専門家に頼むことなく債務整理することが可能です。一方、貸金業者等が調停に応じないなど調停不成立となる場合もあります。また、裁判上の手続のため、調停で決まった内容を履行できないと民事執行の手続をとられるおそれがあります。

ⅲ個人再生

支払不能となるおそれのあるときにとる裁判上の手続です。継続的収入が見込まれることが条件になっています。残債務額を大幅に減少させることが可能です。例えば、残債務額が500万円場合、最低弁済額の100万を原則3年で分割返済すれば、残った債務は免除されます。一方、「清算価値保障」といって最低でも自ら所有している財産の価値分は返済する必要があります。自己破産と比較し、住宅を所有しながら再生する手続がある、免責不許可事由がない、資格制限がないといったメリットがあります。

ⅳ自己破産

支払不能であるときにとる裁判上の手続です。破産手続きが終了し免責許可決定が確定すると、原則すべての借金が免除されます。戸籍や住民票に記載されることはありませんし、家族にも影響はありません。一方、住宅を失うことになる、免責不許可事由(ギャンブルや浪費等)がある、資格制限(警備員や保険外交員等の職業に就けない)がある等のデメリットがあります。

ⅴ過払金返還請求

利息を払いすぎている場合は、払いすぎた利息を取り戻すことが出来ます。貸金業者等が任意の返還に応じない場合は、過払金返還請求訴訟を提起することになります。